言捨(読み)いいすてる

精選版 日本国語大辞典 「言捨」の意味・読み・例文・類語

いい‐す・てる いひ‥【言捨】

〘他タ下一〙 いひす・つ 〘他タ下二〙
① 言ったままで反応を待たない。言い放つ。
源氏(1001‐14頃)藤裏葉「翁〈略〉まかり入りぬと、いひすてて入り給ひぬ」
② 何の気なしに言う。不用意に言う。
山家集(12C後)上「いひすてて後のゆくへを思ひ出でばさて然(さ)は如何に浦島の筥(はこ)
謡曲で、文句のある部分を捨てて発音しない。
※曲附次第(1423頃)「又、すて声とて、云をさめ、又句うつりなどの文字を云すてて、後句へうつる事あり」
連歌俳諧で、その場限りで記録しないで詠む。また、中世、連歌が正式に記録されるのに対して、俳諧は座興のものとして詠み捨てられたところから、俳諧を詠むことを表わす。→言い捨て②。
都路のわかれ(1275)「連哥などいひすてて、夜もすがら遊ぶ」

いい‐すて いひ‥【言捨】

〘名〙 (「いいずて」とも)
① 言ったままで、答えを待たないこと。返事を待たずに、言いっぱなしにすること。
※浮世草子・風流曲三味線(1706)四「朝飯(てうはん)楽屋へ差越せと、いひ捨(ステ)にして早身拵へ」
② (━する) 俳諧用語。詠んだ句を正式に懐紙に記録しないで、即座の興で詠み捨てること。また、その句。おもに中世純正連歌に対して座興として行なわれた俳諧連歌をいう。
※弁内侍(1278頃)建長二年八月十五夜「阿彌陀仏連歌ただ三人せむと仰事あり。いひすてならんこそ念なけれ、少将おぼえよ」
③ (②が誤用されて) 点取り俳諧に対し、点取りをしない俳諧のこと。
※俳諧・信徳十百韻(1675)「書中の奥の彌生つこもり いひすてもこれのみを待時鳥」

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