西王母(能)(読み)せいおうぼ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西王母(能)」の意味・わかりやすい解説

西王母(能)
せいおうぼ

能の曲目。初番目物。五流現行曲。金春禅竹(こんぱるぜんちく)作ともいうが不明。漢の武帝(ワキ)の宮殿。その聖代の寿(ことほ)ぎのなかに、仙人の女(前シテ)が登場。三千年に一度花咲く西王母の園の桃の花を帝(みかど)に捧(ささ)げ、実を結ばせてくるといって天に上る。帝が管弦を奏して待っていると、西王母(後シテ)は従者の女(ツレ)に約束の桃の実を持たせて登場し、美しく祝福を舞う。華やかな太鼓入り中(ちゅう)ノ舞である。『右近(うこん)』『呉服(くれは)』などとともに女性をシテとする異色の脇(わき)能で、小品的な作品だが、舞台面の彩りが美しく、好まれる。なお、中国を舞台とする脇能は、ほかに『東方朔(とうぼうさく)』『鶴亀(つるかめ)』があり、狂言口開(くちあけ)といって狂言方の扮(ふん)する官人の予告で始まるのを特徴とする。

増田正造

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