西大寺(奈良市)(読み)さいだいじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西大寺(奈良市)」の意味・わかりやすい解説

西大寺(奈良市)
さいだいじ

奈良市西大寺芝(しば)町にある真言律宗の総本山。山号は勝寶山(しょうほうざん)。765年(天平神護1)称徳(しょうとく)天皇の勅願により建立。平城京の東にあった東大寺に対し、西の大寺にふさわしく膨大な規模をもち、南都七大寺の一つであったが、平安時代には再三の災害で衰退していった。しかし鎌倉時代に叡尊(えいそん)が再興し、戒律の根本道場として大いに栄えた。その後兵火にあい堂塔を焼失し、現在の本堂、愛染(あいぜん)堂などは江戸時代のものであるが、巨大な基壇、礎石などが往時偉容をしのばせている。寺宝には平安時代の傑作といわれる十二天画像、鉄宝塔、金銅透彫舎利塔、金銅宝塔、『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』10巻、『大日経』7巻などの国宝、本尊釈迦如来(しゃかにょらい)立像、行基菩薩(ぎょうきぼさつ)像などの国指定重要文化財は非常に多い。毎年1月15日、4月第2日曜とその前日の土曜、10月第2日曜に行われる大茶盛(おおちゃもり)式は、叡尊が1239年(延応1)正月に修法後、鎮守八幡(はちまん)に献茶され、余服を参衆に施されたことに始まり、現在でも尺余の大茶碗(ちゃわん)で飲む独特な茶会として有名である。また叡尊は花道にも見識があり、それが松月堂古流として継承されている。

[眞柴弘宗]

『『古寺巡礼 奈良8 西大寺』(1979・淡交社)』

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