血液疾患に伴う好酸球増加症

内科学 第10版 の解説

血液疾患に伴う好酸球増加症(好酸球増加症)

(1)血液疾患に伴う好酸球増加症
概念・分類・病因
 ここに含まれるのは①腫瘍細胞から分泌されるサイトカイン(IL-2,IL-3,IL-5など)によって反応性に好酸球増加をきたす一群の造血器腫瘍(T細胞性リンパ腫,Hodgkinリンパ腫,マスト細胞症,急性リンパ性白血病骨髄増殖性腫瘍),②クローン性(腫瘍性)増殖の一部として好酸球増加を認める造血器疾患慢性骨髄性白血病,inv(16)を示す急性骨髄性白血病,PV,ET,PMFなどの骨髄増殖性腫瘍,骨髄異形成症候群),③慢性好酸球性白血病(非特定型),④PDGFRA,PDGFRB,FGFR1遺伝子変異を伴う好酸球増加を示す骨髄性およびリンパ性腫瘍,の4群である.③と④は好酸球にクローン性増殖が認められるかあるいは末梢血および骨髄中に芽球の増加を認めることが必要であるが,頻度はともにまれである.
病態・臨床症状
 前記③慢性好酸球性白血病(非特定型)は染色体異常あるいは遺伝子異常によるクローン性好酸球増加,あるいは末梢血および骨髄での芽球増加が認められる.ただし,ほかの造血器疾患をすべて除外しなければならず,また前記④の遺伝子異常を認めないことが必要である.おもな病変は末梢血,骨髄以外に,好酸球が浸潤する臓器として心,肺,中枢神経系,皮膚,消化管の障害がある.また脾腫,肝腫もみられる.白血病という名称ではあるが末梢血中の好酸球の大部分は成熟しており,芽球は多くない.前記④PDGFRA,PDGFRB,FGFR1遺伝子変異を伴う好酸球増加を示す骨髄性およびリンパ性腫瘍は,病態が骨髄増殖性腫瘍であっても急性骨髄性白血病あるいは急性リンパ性白血病やリンパ腫であってもこれら遺伝子異常が認められる場合にはこのカテゴリーに分類される.PDGFRA遺伝子異常で最も多いのはFIP1L1-PDGFRA融合遺伝子である.この融合遺伝子は4q12の小さな欠失により形成されるため通常の染色体分析では検出されず,RT-PCRあるいはFISH法が必要である.これら疾患もまれであるがその多くが男性であるという特徴がある.病変の主座は末梢血と骨髄であり,好酸球の浸潤する臓器の症状を呈する.脾腫はほとんどの患者でみられる.この融合遺伝子産物はイマチニブに対する感受性がBCR-ABL1の100倍高いという特徴を有する.PDGFRB遺伝子異常で最も頻度の高いのはt(5;12)によるETV6-PDGFRB融合遺伝子である.この疾患も主座は末梢血と骨髄であり,好酸球の浸潤する臓器の症状を呈する.FGFR1遺伝子異常は骨髄増殖性腫瘍,T細胞性リンパ腫,B細胞性リンパ腫,混合性急性白血病などの病態を取りうる.[檀 和夫]
■文献
Swerdlow SH, et al eds: WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed, pp31-73, IARC Press,Lyon, 2008.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報