萱草に寄す(読み)ワスレグサニヨス

デジタル大辞泉 「萱草に寄す」の意味・読み・例文・類語

わすれぐさによす【萱草に寄す】

立原道造の処女詩集昭和12年(1937)5月私家版刊行。全10編のソネットからなり、「虹とひとと」「夏の弔ひ」などの作品を収める。

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改訂新版 世界大百科事典 「萱草に寄す」の意味・わかりやすい解説

萱草に寄す (わすれぐさによす)

立原道造の第1詩集。1937年,風信子ヒヤシンス)叢書第1冊として刊行された私家版。小間奏曲風な〈夏花の歌〉2編を間に置いて,〈SONATINE No.1〉5編と〈SONATINE No.2〉3編とから構成され,収められた詩はすべてソネット形式をとっている。楽譜を模した装丁をはじめ,徹頭徹尾,音楽が意識された詩集である。詩の内容も〈夏花の歌〉の牧歌風な恋歌を間に,〈No.1〉の失われるべき恋の歌,そして〈No.2〉の失われた恋の歌というふうに,この音楽形式を参考にして探れる。この詩集は愛を主題にして青春の生の陰翳いんえい)をことばの隅々に託した昭和の代表的な抒情詩集である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「萱草に寄す」の意味・わかりやすい解説

萱草に寄す
わすれぐさによす

立原道造の処女詩集。1937年(昭和12)風信子叢書(そうしょ)刊行会刊(私家版)。「SONATINE No.1」「夏花の歌」「SONATINE No.2」の三部よりなり、「音楽の状態にあこがれてつくった」という微細な詩語を構成した10編の十四行詩を収める。信州追分の風光を背景に、愛と別離の主題が物語的に構成されているが、青春の微妙な心理の陰翳(いんえい)の背後に、生の不安や寂寥(せきりょう)感が漂っている。「おぼえてゐたら! 私はもう一度かへりたい/どこか? あの場所へ (あの記憶がある/私が待ち それを しづかに諦(あきら)めた――)」(「夏の弔ひ」)。

[飛高隆夫]

『中村真一郎編『新編立原道造詩集』(角川文庫)』

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