花園の御田(読み)はなぞののおんだ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花園の御田」の意味・わかりやすい解説

花園の御田
はなぞののおんだ

和歌山県伊都(いと)郡かつらぎ町花園梁瀬(やなせ)の御田。有田川上流の山村、旧高野山(こうやさん)荘園(しょうえん)地域には数多くの御田が伝えられていたが、現在は梁瀬のほかに、高野山の地主(じしゅ)神を祀(まつ)るかつらぎ町上天野(あまの)と、川下の有田郡有田川町杉野原、同町久野(くの)原を加えての四か所である。近畿地方では田遊(たあそび)のことを御田植(おんだうえ)、略して御田(おんだ)とよぶのが一般である。梁瀬の御田は、丹生明神(にうみょうじん)の宮寺(みやでら)である大日堂(だいにちどう)の修正会(しゅしょうえ)の延年(えんねん)の形式で、1月8日に行われる。所役は立役(たちやく)12人、囃子方(はやしかた)13人、そのほかの諸役を含め約40人に上る。ここには修正会の「修法(おこない)」もあり、御田は御堂(みどう)の外陣(げじん)を舞台に、田打ち、苗代(なわしろ)作り、田植、収穫、献供(けんく)の構成をとり、生き生きとした歌唱と立役の妙技をみせ、荘園時代を彷彿(ほうふつ)とさせる。「花園の御田舞(おんだのまい)」として重要無形民俗文化財に指定されている。なお、杉野原の御田舞も国指定重要無形民俗文化財となっている。

[新井恒易]

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