胡蝶(雅楽)(読み)こちょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「胡蝶(雅楽)」の意味・わかりやすい解説

胡蝶(雅楽)
こちょう

雅楽の曲名。別名「花持舞」、略して「蝶」ともいう。高麗壱越調(こまいちこつちょう)に属する楽舞で、童舞(どうぶ)四人舞。左方唐楽(とうがく)の童舞『迦陵頻(かりょうびん)』に対し、日本でつくられた番舞(つがいまい)である。醍醐(だいご)天皇の延喜(えんぎ)6年(906)または8年(908)に宇多(うだ)上皇が童相撲(わらべずもう)を御覧になる際、勅命によって山城守(やましろのかみ)藤原忠房(ただふさ)が作曲し、敦実(あつみ)親王が作舞したといわれる。舞人の稚児(ちご)らは、頭上の天冠(てんがん)には山吹の花、背には蝶の羽をつけ、右手に山吹の小枝を持って舞う。高麗乱声(らんじょう)により登台して「出手(ずるて)」を舞い、当曲で胡蝶の飛び交うさまを舞い、最後には大きな輪をなし実際に飛びながら順次退出する。『迦陵頻』とともにその可憐(かれん)さを尊ばれ、四箇(しか)法要の献供作法にもしばしば取り入れられる。

[橋本曜子]

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