肺動脈性肺高血圧症(読み)ハイドウミャクセイハイコウケツアツショウ

デジタル大辞泉 「肺動脈性肺高血圧症」の意味・読み・例文・類語

はいどうみゃくせい‐はいこうけつあつしょう〔‐ハイカウケツアツシヤウ〕【肺動脈性肺高血圧症】

肺の細い血管が異常に狭く、硬くなって、血液が流れにくくなり、肺動脈血圧が異常に上昇する病気。体を動かすときに息苦しく感じ、すぐに疲れる、体がだるい、意識がなくなるなどの症状が現れる。特定疾患一つ。→肺高血圧症

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肺動脈性肺高血圧症」の意味・わかりやすい解説

肺動脈性肺高血圧症
はいどうみゃくせいはいこうけつあつしょう

心臓から肺に血液を送るための血管である肺動脈の血圧が、肺の血管自体の障害に伴って上昇している疾患。英語表記pulmonary arterial hypertensionの頭文字をとって、PAHと略される。指定難病。原因が不明の特発性(原発性)PAHや遺伝子異常による遺伝性PAHのほか、薬物により誘発されたPAHや、膠原(こうげん)病、肝臓病、先天性心疾患、HIV感染症、日本住血吸虫症などに伴うPAHがある。いずれも、発症の原因は明らかではない。なお、肺動脈の血栓塞栓、あるいは心臓の病気により、二次的に肺動脈圧が上昇する場合はPAHではない。2014年度(平成26)の調査によると日本全国の患者数は約2300名で、女性は男性の約2倍である。女性は加齢とともに発症が増えるのに対して、男性は20歳代が多く、40歳代まで減少しその後は加齢とともに増える。

 PAHでは、心臓に負担がかかり全身への酸素の供給が不十分になるため、体を動かすと息苦しくなるほか、疲れやすく、体がだるくなり、失神することもある。心臓の機能低下が進むと、足がむくみ、体を少し動かすだけで息苦しくなる。診断には心臓のカテーテル検査が必要である。治療は、利尿薬抗凝固薬、肺血管を広げる薬物などの薬物療法酸素療法などが用いられる。肺移植なども行われるようになった。

[大久保昭行 2016年6月20日]

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