総論3:凝固線溶系とその制御機構

内科学 第10版 の解説

総論3:凝固線溶系とその制御機構(血液疾患)

 打撲や切創により血管が破綻したとき,血液は速やかに凝血塊を形成して破綻部位からの血液の流失や,微生物などの有害物質の生体内への侵入をくい止めなければならない.一方,血液が酸素や二酸化炭素,栄養素運搬など本来の役割を果たすためにはよどみなく血管の中を流れていることが必要であり,不要あるいは過剰な血栓形成は出血にも増して生体に大きな危険をもたらす.そこで必要とされる場所で過不足なく凝血塊を形成できるように止血機構は巧みな調節機能を備えている.すなわち,凝固系は多くの因子が参画するカスケード(階段状の滝)を形成していて,反応が進むごとに増幅される一方,それぞれの活性化段階で制御因子がチェック機能を果たしており,凝固カスケードの最終産物である不溶性のフィブリンが過剰に産生されて虚血障害が起こることがないように監視している.これら凝固制御機構の多くは血管内皮細胞の機能に依存しているので,止血血栓の形成は血管内皮細胞が脱落した血管破綻部位のみで進行し,血管内皮細胞の機能が維持されている場所(非傷害部位)へ広がらない仕組みになっている.[白幡 聡]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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