立渡(読み)たちわたる

精選版 日本国語大辞典 「立渡」の意味・読み・例文・類語

たち‐わた・る【立渡】

〘自ラ四〙
① 雲、霧などが立って一面におおう。一面にかかる。また、波が一面に立つ。
古事記(712)中・歌謡狭井河(さゐがは)よ 雲多知和多理(タチワタリ) 畝火山 木の葉さやぎぬ 風吹かむとす」
万葉(8C後)五・八三九「春の野に霧多知和多利(タチワタリ)降る雪と人の見るまで梅の花散る」
② 人や車が一面に立ち並ぶ。一帯にとどまる。
紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日「弦うち二十人、五位十人、六位十人、二なみにたちわたれり」
③ 立って移動する。こちらからあちらに行く。あちらからこちらに来る。
※万葉(8C後)一〇・二二二四「この夜らはさ夜ふけぬらし雁(かり)が音の聞こゆる空ゆ月立渡(たちわたる)

たて‐わた・す【立渡】

〘他サ四〙 ここかしこに立てる。一面に立てる。立てつらねる。
※万葉(8C後)六・九二六「野の上には 跡見すゑ置きて み山には 射目立渡(たてわたし)
※宇津保(970‐999頃)祭の使「いとゆふの御几帳どもたてわたして」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android