稲荷台1号墳(読み)いなりだいいちごうふん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「稲荷台1号墳」の意味・わかりやすい解説

稲荷台1号墳
いなりだいいちごうふん

千葉県市原市山田橋字稲荷台にあった円墳。養老川下流域右岸、海岸平野に面した市原台地上に位置し、円墳12基以上からなる古墳群中最大規模を有す。墳丘は1977年(昭和52)の調査の後に消滅したが、その大きさは径約28メートル、二段築成で高さ2.2メートルであった。遺骸埋葬施設は、墳頂部に2基、東西方向を向く木棺直葬であった。中央棺の規模は不明であるが、鉄剣3、鋲(びょう)留短甲1、鉄鏃(てつぞく)10以上、刀子(とうす)1が出土した。このうちの鉄剣1例から87年に、「王賜□□敬、此廷□□□」という12文字の銀象嵌(ぎんぞうがん)銘文が発見された。北棺は両小口を粘土で押さえた木棺直葬で、棺長は約2.6メートルで東枕であった。大刀(たち)1、鉄鏃10以上、胡簶(ころく)金具1、ささげ状工具1、砥石(といし)1が出土した。墳丘および周堀(しゅうぼり)内から須恵器(すえき)(坏(つき)・無蓋高坏・(はそう)・甕(かめ))と土師器(はじき)(坏・高坏・坩(つぼ))が出土した。須恵器はTK208型式期、土師器は鬼高Ⅰ式土器で、埋葬年代は5世紀中葉と考えられるが、「王賜」銘鉄剣の製作年代はそれよりさかのぼるものと考えられる。

大塚初重・遠竹陽一郎]

『市原市教育委員会・市原市文化財センター編『「王賜」銘鉄剣概報 千葉県市原市稲荷台一号墳出土』(1988・吉川弘文館)』

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