粘土(読み)ねばつち(英語表記)clay

翻訳|clay

精選版 日本国語大辞典 「粘土」の意味・読み・例文・類語

ねば‐つち【粘土】

〘名〙 ねばりけのある土。へなつち。はに。ねばりつち。ねんど。ねば。
和玉篇(15C後)「 ネバツチ」
※狂歌・銀葉夷歌集(1679)九「あぶなあぶな通るもすべるねは土は高きあしだのはさへぬけ道」

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デジタル大辞泉 「粘土」の意味・読み・例文・類語

ねん‐ど【粘土】

岩石が風化や熱水作用によって分解してできた微細な粒子の集まり。地質学では粒径256分の1ミリ以下、土壌学では0.002ミリ以下をいう。水分を加えると粘着性可塑性かそせいを示し、乾くと硬くなる。陶磁器耐火物などの原料にする。ねばつち。
[類語]土壌土地大地壌土土砂赤土黒土緑土黄土凍土ローム陶土はに壁土アンツーカー腐植土腐葉土シルト残土

へな‐つち【粘土/×埴土】

へな」に同じ。

へな【粘土/×埴】

粘土。また、水底にたまった粘土を多く含んだ黒い土。へなつち。

ねば‐つち【粘土】

粘りけのある土。ねんど。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粘土」の意味・わかりやすい解説

粘土
ねんど
clay

一般語としては、きわめて微細な風化物の粒からなる可塑性と粘性に富んだ物質のことで、砂粒との違いが容易に認識されやすい。岩石の風化物として地質学的に定義すれば、粒径256分の1(2-8)ミリメートル以下の土状沈殿物(海底または湖底の)をいい、地層の間では粘土層あるいは礫(れき)や砂と混在した状態をなしている。土壌学的な定義はやや異なり、国際法的に決められた定義は粒径2マイクロメートル以下の粒子をさす。ただしロシアなどのように2マイクロメートル以下をさらに細区分することも行われる。かつて日本の農学会法では0.01ミリメートル以下を粘土としていたが、この粒径の上限は大きすぎて粘土の特性を示さない粗粒子が入ってしまうために、いまでは採用されなくなった。

 粘土の属性として共通の特性は、その化学組成が岩石の風化過程で生成したケイ酸アルミニウムの結晶構造を主体としていることである。この構造は100ナノメートル~1マイクロメートルの単位で測られるようなコロイド粒子であって、電子顕微鏡で明らかにされた。化学組成の違いによって何種類もの粘土が分類されるが、代表的なものはカオリナイトである。その結晶構造はケイ素四面体(ケイ素原子を中心に置き、四つの酸素原子をその周りに配した立体)が前後左右に連結した結晶板と、アルミニウム八面体(アルミニウム原子の周りに6個の酸素原子を配したもの)が1対1の基本構造をもって連結した結晶板が、上下に何枚も重なり合って1粒の粘土粒子をつくっていると解釈されている。またケイ素四面体とアルミニウム八面体が2対1で重なり合うタイプにはバーミキュライトなどがある。これら粘土の表面や結晶板構造の内面にマイナス荷電が生じ、これにプラスのイオン(カリウムカルシウム、ときには水素)が吸着されて安定する。また水の分子も吸着されるので、粘土は吸湿性をもつ。さらに粘土粒子どうし、あるいは粗粒の砂やシルト粒子を結合させる力があり、土壌粒子全体に集合体(団粒など)を形成させる効果を現す。

 粘土にはほかにモンモリロナイトイライトハロイサイトベントナイトなどの種類があり、吸湿性の強さには違いがみられる。アロフェンとよばれる粘土鉱物は火山灰の風化過程で生ずるもので、粘土としては例外的に結晶構造をもたない、いわゆる非晶質粘土である。これは有機質コロイド粒子である腐植と結合しやすいという特性をもっている。粘土を土壌の生成過程でみると、風化作用に伴って生ずる二次的生成物であるから、その鉱物成分二次鉱物といい、あるいは粘土鉱物ともよんで、土壌の生成論、分類論の展開のうえに重要な役割を与えている。

[浅海重夫・渡邊眞紀子]

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改訂新版 世界大百科事典 「粘土」の意味・わかりやすい解説

粘土 (ねんど)
clay

岩石中の鉱物が分解,破壊されてできた微細粒子の集合体をいう。土壌の分類では粒子の径が2μm(0.002mm)以下のものを,堆積物・堆積岩の分類では1/256mm以下のものをいうなど,その大きさの範囲は分野により異なる。おもに粘土鉱物より成り,一般に親水性が強く,水を含むと可塑性,粘着性を示し,乾燥すれば剛性を示す。岩石の風化作用,温泉作用あるいは熱水変成作用などによって生じ,地上,海底に広く分布している。特定の性質をもつ粘土,例えば,耐熱性の高いものは耐火粘土として耐火物原料に,さらにその中で鉄分の少ないものは陶磁器原料などとして用いられている(木節(きぶし)粘土蛙目(がえろめ)粘土など)。窯業原料のほかにも,製紙工業,ゴム工業など多方面に利用され(カオリンなど),粘土は生物の生存に重要な土壌の主成分を構成する。
執筆者:

粘土は腐植とともに土壌中の主要なコロイドであって,農業の基盤としての土壌が種々の機能を有するのも粘土のもつ特性によるところが大きい。粘土の性質は粘土鉱物に基づくもので,粘土鉱物がもつ特性のなかには,陽イオン交換,イオンの固定,膨潤・分散・凝集など,農業上からみてきわめて重要な性質が含まれている。陽イオン交換は,粘土表面の陽イオンと,これに接触している溶液中の陽イオンとの間で行われる可逆的な交換反応であり,交換しうる陽イオンの最大量(陽イオン交換容量)は,モンモリロナイトのような膨潤型粘土鉱物で大きい。そのため,粘土に不足し,肥料成分の流亡が大きい砂質土壌や漏水過多の水田土壌では,土壌の養分保持能力を高め漏水を防止するために,モンモリロナイトが主成分であるベントナイト客土として用いられる。粘土鉱物によるイオンの固定とは,イオンが粘土鉱物によって強く吸収され,容易に他のイオンによって交換されにくい現象をいう。固定されるイオンとしては,陽イオンはカリウム,アンモニウム,陰イオンはリン酸が最もよく知られている。リン酸イオンの固定は,粘土表面に吸着されたリン酸が,最終的にはリン酸アルミニウム,あるいはリン酸鉄の化合物となって沈殿することによるもので,バン(礬)土質土壌でとくに顕著である。粘土鉱物は環境条件によってその種類に強い影響をうけ,その分布は土壌型と深い関係がある。なお,学校教材の粘土については〈粘土細工〉の項目を参照。
粘土鉱物
執筆者:

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百科事典マイペディア 「粘土」の意味・わかりやすい解説

粘土【ねんど】

のうちシルトより粒の細かいもの。粒径は地質学では1/256mm,土壌学などでは0.05mm以下。粘土鉱物の粒子が大部分で他の鉱物は若干混じる程度。ほとんどが岩石や鉱物の化学的風化の産物で,水分を含むと粘性をもつのが特徴。下盤(したばん)粘土(石炭層の下盤側に産するカオリン質粘土。耐火物に用いる),木節(きぶし)粘土,蛙目(がえろめ)粘土(瀬戸・多治見付近に産する層状の粘土。陶磁器原料)など産地や産状によって種々の名称がある。
→関連項目耐火粘土地下資源

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岩石学辞典 「粘土」の解説

粘土

様々な組成の細粒の堆積物で,粘土の粒度またはコロイド状の粒子で50%以上が0.0039mm(1/256mm)以下のものからなっている.粘土は岩石がその場で風化作用を受けたもの,移動や風化物の堆積に由来したもの,適当な環境では沈澱か綿状沈澱集積(flocculation)に由来したもの,などによる.粘土鉱物は通常は岩石の全体から作られ,他の組成には石英,長石,炭酸塩,鉄を含む鉱物などが含まれる.粘土は用途によって煉瓦用粘土(brick clay ; pipe clay),陶器用粘土(potters clay),磁器用粘土(porcelain clay)などと呼ばれている[Pettijohn : 1949, Arkell & Tomkeieff : 1953].アングロサクソンの古英語では粘土はcloegであった.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粘土」の意味・わかりやすい解説

粘土
ねんど
clay

5μm以下の土粒子の総称。岩石が風化分解すると,ケイ素,アルミニウムと水が結びついて粘土鉱物がつくられる。粘土鉱物には2層構造と3層構造のものがあり,前者はカオリン類 (陶土など) ,後者はモンモリロナイトイライトなどで,層間に水,カリウム,鉄,マグネシウムなどが入ることによって異種の粘土鉱物となる。石英以外の造岩鉱物はすべて分解して粘土鉱物となる。 (→カオリナイト )  

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化学辞典 第2版 「粘土」の解説

粘土
ネンド
clay

掘り出したまま,あるいは精製した状態において,含有アルミノケイ酸塩を主成分とする天然に算出する鉱物集合体をいう.用途,成因,主鉱物相,堆積状態,年代などによっていろいろな分類がなされている.主鉱物は,カオリナイト,ハロイサイト,パイロフィライト,セリサイト,モンモリロナイト,クロライト,イライトなどである.

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事典・日本の観光資源 「粘土」の解説

粘土

(三重県伊賀市)
伊賀のたからもの100選」指定の観光名所。

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普及版 字通 「粘土」の読み・字形・画数・意味

【粘土】ねんど

ねば土。

字通「粘」の項目を見る

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