移葬(読み)いそう

精選版 日本国語大辞典 「移葬」の意味・読み・例文・類語

い‐そう ‥サウ【移葬】

〘名〙 古代死者を、一時葬ってあった殯宮(あらきのみや)から陵墓に移し葬ること。
万葉(8C後)二・一六六・左注「右一首今案不移葬之歌

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「移葬」の意味・わかりやすい解説

移葬
いそう

一度葬られたあと、なんらかの理由で改めて二次的に葬儀がなされることをいう。改葬ともよばれる。葬法が2段階以上に分かれていることが制度的であれば、葬制全体として複葬と普通よばれている。いったん埋められた死体が掘り起こされ、洗骨がなされて、改めて葬儀を行ってこの骨が葬られる手順が複葬の典型である。複葬の分布は、熱帯アメリカ、インドネシアメラネシアニュージーランド、中国南部の中国人や少数民族の一部、ベトナム人、中部インドのムンダ系諸族などに広がっており、アフリカではあまりみられない。日本でも一部で改葬として制度的になっている所もある。一方、二次的な葬儀が制度的なものではなく、個別的で偶発的な改葬の例もある。たとえば、朝鮮や中国では多くの場合、風水信仰に基づいて、子孫災い祖先の墓の位置によるものとして、他の場所へ移葬されることがある。移葬の起源については、複葬一般の起源とも関連し、また死生観、他界観の多様からまだつまびらかにされていないが、風水信仰がそうであるように、定住性が一つの前提条件と考えられている。

[髙谷紀夫]

『大林太良著『葬制の起源』(角川選書)』

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