社会保障費抑制(読み)しゃかいほしょうひよくせい

知恵蔵 「社会保障費抑制」の解説

社会保障費抑制

国家予算の中で大きなウエイトを占め、年々増加の一途をたどる社会保障費について、その伸び率を抑え込んで財政負担を軽減しようとする政策小泉内閣の「骨太の方針2006」などでも示されたが、新たな「骨太の方針2015」では「伸び抑制」と明記し、16年度予算編成までに医療年金などの制度改革の具体策を打ち出すとする。財務大臣諮問機関である財政制度等審議会では、高齢化などで増加する社会保障費の増加を半減、20年度までの5年間で2兆5千億円程度に抑えるよう提言。その方策として70歳以上75歳未満の医療費の窓口負担割合を1割から2割に引き上げたり、高所得者の年金を減額したりといった方向性を示している。
急速に進む少子高齢化の影響などで、社会保険料収入は60兆円程と横ばいとなっているが、厚生労働省などの推計によれば社会保障給付金は15年度にも120兆円に迫る。この差を公費で賄うが、その規模は毎年1兆円のペースで膨らむ。15年度の日本の一般会計予算では、社会保障関係費は約32兆円。歳出総額96兆円のうち、24%に当たる国債の元利支払いや16%に当たる地方交付税交付金を除いた一般歳出は58兆円。社会保障関係費はこのうちの55%を占めていることになる。国の歳入の4割を国債に頼る現状から、財政健全化のために社会保障費の見直しが強く求められた。政府の経済・財政政策の方針として、第3次安倍内閣は15年6月に「骨太の方針2015」を掲げた。これによると、財政赤字を国債の利払いなどを除いてGDP(国内総生産)の1%程度にまで減らし、20年度には国や地方の財政の黒字化を目指すという。こうした中で、社会保障費の半分を占める年金や、3割を超える医療費などの見直しが検討される。
しかし、社会保障は国民の生活安定や所得の再分配としての役割も大きく、日本の社会保障費がGNI(国民総所得)に占める割合は、OECD(経済協力開発機構)加盟各国の平均程度に過ぎず、公的医療保険が整備されていない米国を除いた西欧先進諸国と比べると少ない水準にとどまっている。社会保障・税一体改革を唱えながら、国民、特に低所得者や弱者にしわ寄せと負担を強いるものではないかとの批判がある。また、アベノミクスと称して金融緩和ばかりが目立つが、国民生活にとって身近で切実な医療や介護などこれからの社会保障を充実していくという視点が抜け落ちているとの反発も大きい。

(金谷俊秀 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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