痴・烏滸・尾籠（読み）おこ

精選版 日本国語大辞典

おこ をこ【痴・烏滸・尾籠】

〘名〙 (形動)

① 愚かなこと。ばかげたこと。思慮の足りないことを行なうこと。また、そのさまや、その人。

※古事記（712）中・歌謡「我が心しぞ いや袁許(ヲコ)にして 今ぞ悔しき」

② ふとどきなこと。不敵なこと。また、そのさま。

※曾我物語（南北朝頃）九「まことや、此者は、朝比奈にみぎはまさりの大力、おこの者と聞きたり」

[語誌]「うこ」の母音交替形。奈良時代からさかんに用いられ、漢字をあてて漢文脈の中にも多く使われた。多くの漢字表記が残っているが、時代で使う漢字が定まっていたらしい。平安時代の漢字資料では「」「滸」など、「烏許」を基本にこれにいろいろな偏を付した漢字を用い、院政期には「嗚呼」が優勢となり、鎌倉時代には「尾籠」が現われ、これを音読した和製漢語「びろう（尾籠）」も生まれた。→「うこ（痴）」の語誌

出典　精選版 日本国語大辞典