甚振(読み)いたぶる

精選版 日本国語大辞典 「甚振」の意味・読み・例文・類語

いた‐ぶ・る【甚振】

(「いた」は形容詞「いたい」の語幹から)
[1] 〘自ラ四〙 物が激しく揺れ動く。はなはだしく動揺する。
万葉(8C後)一一・二七三六「風をいたみ甚振(いたぶる)波の間(あひだ)無くあが思ふ君は相思ふらむか」
[2] 〘他ラ五(四)〙
① 激しく揺り動かす。
※俳諧・発句類聚(1807)春「いたぶりて寝る鴨起せ春の海〈長翠〉」
金品などを無理にねだる。ゆする。
※雑俳・柳多留‐一一(1776)「いわうかと下女をいたぶる樽ひろひ」
③ いじめる。いやがらせをする。
※黒雨集(1923)〈田中貢太郎牡蠣船「辨天島の綺麗な後家神に、いたぶられたらう、ぐずぐずしよると生命がないぞ」

いたぶらし【甚振】

〘形シク〙 (動詞「いたぶる(甚振)」の形容詞化) 心が激しく動いて落ち着かない。
※万葉(8C後)一四・三五五〇「おして否(いな)と稲は舂(つ)かねど波の穂の伊多夫良思(イタブラシ)もよ昨夜(きそ)独り寝て」

いた‐ぶり【甚振】

〘名〙 (動詞「いたぶる(甚振)」の連用形名詞化) 他人に金品をねだること。せびり取ること。また、その人。
浮世草子・当世乙女織(1706)七「ほれぬ男にいたぶりをして嬉しがらすも傾城商売

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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