猪首・猪頸(読み)いくび

精選版 日本国語大辞典 「猪首・猪頸」の意味・読み・例文・類語

い‐くび ゐ‥【猪首・猪頸】

〘名〙
イノシシのように太くて短い首。そのような首をした人。また、首をちぢめること。〔文明本節用集(室町中)〕
歌行燈(1910)〈泉鏡花〉八「小女が猪首(ヰクビ)で頷(うなづ)き」
② 兜などのかぶりものをあおむけて、深くかぶること。また、着物など襟を高めにして着て首が短く見えるさまにいう。
※保元(1220頃か)中「黒皮威(をどし)の鎧に、同じ毛の五枚冑を猪頸に着」
歌舞伎・戻橋脊御摂(1813)序幕「てまへのその着る物の着やうは。〈略〉猪首になってゐるわな」
[語誌]②の兜を猪首に着る例は、戦いにあたって視界をよくするためのかぶり方。首筋を覆う錏(しころ)が深くかかって首が短く見える。額が露出して危険だが、それが勇敢さを示すことにもなる。通常は寒気雨滴が首筋にかかるのを防ぐためにするかぶり方。

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