独判断(読み)ひとりさばき

改訂新版 世界大百科事典 「独判断」の意味・わかりやすい解説

独判断 (ひとりさばき)

浄瑠璃作者近松半二著の随想。1787年(天明7)山田卯兵衛版。半二の没後刊行。疎懶堂,浄瑠璃作者紀上太郎らが叙,跋を寄せる。西沢一風《伝奇作書》に本文を掲載。完全翻刻としては吉永孝雄〈近松半二《独判断》の翻刻に当って〉がある。大同小異の内容を持つ《半二現世安心記》写本子孫の穂積家に伝えられ,翻刻もある。神仏の有無,天地開闢の初めなどについて論じ,儒教の現実主義に不満を覚えながら,仏教来世観にも素直に従えず,結局徹底的考察をもって悩みを解決することなく,日常性の中に埋没していく姿を,自嘲的な戯文で綴る。儒者の家に生まれ,作品にも強い自我を表明してきた半二の内面生活がうかがわれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報