灯台(照明用灯火具)(読み)とうだい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「灯台(照明用灯火具)」の意味・わかりやすい解説

灯台(照明用灯火具)
とうだい

アカシダイともいう。照明用灯火具の一種。主として油用の灯火具をさすが、もっとも原初的なものとしては、樹脂だけになった松の根を細く割ったヒデを燃すために用いたヒデバチがある。ヒデバチは石で臼(うす)型、角型にしたもののほかに、鉄製の古鍋(ふるなべ)を用いたり、石皿を三つまたの枝にのせたものなど、地方によってその形態はさまざまであった。ごま油菜種油などが貴重品でなかなか用いることのできなかった農山村では、こうしたヒデバチが近代まで使われていた。油が灯火に使われ始めたのはかなり古い時代からで、初めは細い棒を3本束ねて足を開き、その頂部に灯明皿を置いた結(むすび)灯台とよぶ簡単な作りのものを使用した。灯台の高さはほぼ三尺二寸(約97センチメートル)とされ、丈の高いものを高(たか)灯台、長檠(ちょうけい)といい、低いものを切(きり)灯台、短檠(たんけい)などとよんだ。屋内でこうした灯火具を使用していたようすは中世絵巻物にも描かれている。平安時代以降、円型の台に長竿(さお)を立てその先端に蜘蛛手(くもで)をつけて灯明皿を置いた灯台が用いられるようになった。台の形が菊の花形である菊(きく)灯台、牛糞(うしくそ)形の牛糞灯台がつくられ、これらには蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)の装飾を施すこともあった。さらに江戸時代中期には、皿の油を自動的に補給する仕掛けをもった鼠(ねずみ)灯台がつくられた。

[倉石忠彦]

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