火焔太鼓(落語)(読み)かえんだいこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「火焔太鼓(落語)」の意味・わかりやすい解説

火焔太鼓(落語)
かえんだいこ

落語。道具屋の甚兵衛が市(いち)で汚れた太鼓を一分(いちぶ)で買ってくると、女房が「そんなものを一分で買や一分まる損だ」と小言をいう。甥(おい)の定吉がおもしろがってほこりをはたき、たたいているところへ侍(さむらい)がやってきて、「殿(との)がお通りのところ太鼓の音を聞かれ、どのような太鼓か見たいと仰せられるからお屋敷まで持参いたせ」という。甚兵衛はびっくりしながらおそるおそる太鼓を持って行くと、これなるは火焔太鼓という名器であると300両で買い上げられた。喜んだ甚兵衛が家に帰ってお金を出す。女房の「もうかるねぇ。なんでもかまわないからこれからは音のするものに限るねぇ」に甚兵衛が「今度は半鐘を買ってきて、たたき売って……」とこたえると女房が「半鐘はいけないよ、おじゃんになる」。江戸時代から伝わる軽妙な作品だが、初代三遊亭遊三の演出を聞き覚え、それを練り直した5代目古今亭志ん生(ここんていしんしょう)の所演が、昭和落語の代表的名演の一つであった。

[関山和夫]

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