湯浅醤油(読み)ゆあさしょうゆ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯浅醤油」の意味・わかりやすい解説

湯浅醤油
ゆあさしょうゆ

和歌山県有田(ありだ)郡湯浅町、広川(ひろがわ)町で生産されるしょうゆ。その起源については、1258年(正嘉2)に紀伊国由良(ゆら)(和歌山県由良町)の興国寺(こうこくじ)開山となった法燈(ほっとう)国師(心地覚心(しんちかくしん))が、中国から径山寺(きんざんじ)みその醸造法を習って帰国し、湯浅で布教した際、この地の水がみそをつくるのに適しているのを認め、みそがつくられ、その槽底(ふなぞこ)に沈殿した液からしょうゆをつくるようになったという。これが日本しょうゆの起源と伝えられている。これは史実というよりも伝説であるが、この地方は日本でももっとも古いしょうゆ生産地の一つである。近世中期には有田郡広村(現広川町)の浜口儀兵衛(ぎへえ)が千葉県の銚子(ちょうし)でしょうゆの醸造を始めている。近世には紀州藩の御仕入方商品として、藩の保護と統制を受け、京都・大坂にも出荷するなど全国的にも有名となった。明治初年には1000石近い生産をする者もあった。生産者の数は1815年(文化12)には湯浅村、広村、栖原(すはら)村(現湯浅町)を含めて46名であった。

[安藤精一]

『安藤精一著『近世都市史の研究』(1985・清文堂出版)』『天野雅敏著『幕末明治期における醤油醸造業の展開に関する一考察』(安藤精一先生退官記念論文集『和歌山地方史の研究』所収・1987・宇治書店)』

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