清水(狂言)(読み)しみず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「清水(狂言)」の意味・わかりやすい解説

清水(狂言)
しみず

狂言曲名大蔵流では鬼狂言、和泉(いずみ)流では太郎冠者(かじゃ)狂言。主人が太郎冠者(シテ)を呼び出し、野中清水お茶の水を汲(く)んでこいと命じる。これが毎度の例になってはと一計を案じた太郎冠者は、主人秘蔵の手桶(ておけ)を途中で投げ出し、鬼が出たと逃げて帰る。主人が手桶を取りに出かけると、冠者は清水へ先回りし、鬼の面(武悪(ぶあく)の面)を着けて脅して、召使いをたいせつにせよといろいろな注文をつける。先に戻って主人を出迎えた冠者は、主人に、さいぜん鬼はなんといったのかと尋ねられ、「いで食らおう」と鬼のまねをする。声が同じであることに気づいた主人は、ふたたび清水へ出かけ、今度は冠者の鬼の面をはぎ取って追い込んでいく。主人に先回りするため家と清水との間を疾走する冠者のようすが想像されて楽しい。

[池田英悟]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例