淀船(読み)よどぶね

精選版 日本国語大辞典 「淀船」の意味・読み・例文・類語

よど‐ぶね【淀船】

〘名〙
淀川を上下して貨客を輸送した川船。
※大観本謡曲・逆矛(1432頃)「都路を、夜深く出でて淀舟や立つ旅衣はるばると」
② 淀を根拠に、淀川を幹線航路として木津川・宇治川・桂川など淀川水系に就航し、諸荷物や旅客の運送にあたった中世以来の代表的な川船。渇水時には大船の上荷物を積み取って運送したので上荷船とも呼ばれた。天正年間(一五七三‐九二)、淀川下流域の船持によって三十石積以上の船が出現して独占的体制がくずれ、慶長年間(一五九六‐一六一五)の淀川過書船の成立でその仲間に編入された。江戸時代の船数は五〇七艘におよんだが、比較的小型の二十石積船のため、二十石船・淀二十石船・淀上荷船などと呼ばれて、他の過書船と区別され、また運営上も三十石船以上の過書船とせり合うことが多く、紛争が絶えなかった。
浮世草子西鶴置土産(1693)五「京も俄にむつかしく淀舟(ヨドフネ)飛乗難波北浜にあがりて」

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世界大百科事典(旧版)内の淀船の言及

【淀】より

…同書には,淀宿は農業のほか旅籠屋渡世や食物を商う茶店を営むものがあるが,納所町,水垂町,大下津町には船頭や馬方などの交通運輸にかかわる職種が多く,池上町,下津町,新町には諸商人や諸職人が多いと,城外町と城内町とでは職掌に差がみえることを記している。淀は淀船と呼ばれる20石積の小船の根拠地であり,淀川本流で活躍する過書船,伏見船と,その権益をめぐってたびたび対立した。また納所の唐人雁木と呼ぶ船着場は朝鮮通信使の上陸地であり,淀城の北と西の揚水用大水車は,淀の景物として親しまれた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」