江戸子・江戸児(読み)えどっこ

精選版 日本国語大辞典 「江戸子・江戸児」の意味・読み・例文・類語

えどっ‐こ【江戸子・江戸児】

〘名〙
① 江戸で生まれ育ったきっすいの江戸の人。おもに町人にいい、物事にこだわらず、意地と張りに生きる侠気を誇った反面、短気で軽率だといわれた。東京生まれの人にも使う。あずまっ子。江戸者。
※雑俳・川柳評万句合‐明和八(1771)礼二「江戸っ子のわらんじをはくらんがしさ」
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉二「御国(おくに)はどちらでげす、え? 東京? 夫(そ)りゃ嬉しい、御仲間が出来て…私もこれで江戸っ子です」
② 江戸特有のことば。江戸弁。江戸。
太政官(1915)〈上司小剣〉九「東京へいてさかい、江戸っ児(東京弁の事)がえらう上手やな」
[語誌](1)この語は、明和(一七六四‐七二)になって文献に現われ始めるが、天明一七八一‐八九)に至り、江戸っ子気質ともいうべきものが典型化された。その特色として、(イ)将軍お膝元の生まれ、(ロ)金ばなれがよい、(ハ)乳母日傘(おんばひがさ)での高級な育ち、(ニ)日本橋のような江戸市街中央部の生粋生え抜き、(ホ)「いき」と「はり」を本領とする、などが挙げられる(西山松之助「江戸ッ子」)。
(2)その一方で、この時期(田沼時代)には、農村からの流入者や他国からの出稼人激増など、町人社会の構造的変動が進行しつつあり、反体制的な貧民層が増大したことにより、寛政一七八九‐一八〇一)後半頃から化政期(一八〇四‐三〇)頃になると、むしろ江戸生え抜きの町人社会における精神的支柱として、江戸店(えどだな)や流入民に対する優越感反発とを主たる契機とした「おらア江戸っ子だ」という自意識へと変容していった。このような強烈な自意識に支えられて、化政期には、江戸町人の言語的特徴も明確になる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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