気道熱傷(読み)キドウネッショウ(英語表記)Inhalation injury (Airway burn)

デジタル大辞泉 「気道熱傷」の意味・読み・例文・類語

きどう‐ねっしょう〔キダウネツシヤウ〕【気道熱傷】

火災爆発の際に発生する高温の煙や水蒸気有毒ガスなどを吸入することによって生じる呼吸器障害の総称

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六訂版 家庭医学大全科 「気道熱傷」の解説

気道熱傷
きどうねっしょう
Inhalation injury (Airway burn)
(外傷)

どんな外傷か

 気道熱傷とは、熱や煙の吸入により生じた呼吸器系の傷害で、さまざまな原因による傷害がすべて含まれます。その原因により、熱による傷害、煤煙(ばいえん)および煙に含まれる有毒化学物質による傷害に分類されます。

 熱による直接の傷害はのどの奥(咽頭(いんとう)喉頭(こうとう))までにとどまり、有毒化学物質によるものはそれより先の気管気管支・肺の傷害が主になります。

 傷害を受ける部位により分類すると、咽頭・喉頭浮腫(ふしゅ)主体の上気道型、気管・気管支が傷害を受ける気管・気管支型、肺炎が主体の末梢型に分類されますが、後二者の区別は困難な場合もあります(図58)。有毒化学物質のひとつである一酸化炭素による一般化炭素中毒を、気道熱傷の場合に合併することが多いために、気道熱傷のひとつに分類する場合もあります。

症状の現れ方

 上気道型の気道熱傷は、咽頭・喉頭浮腫による上気道の閉塞が起こりやすく、最悪の場合は窒息による呼吸停止をまねくことがあるため、受傷後24時間以内はとくに注意が必要です。

 室内や車内などの閉鎖された空間で火災による熱気や煙を吸入した場合には、皮膚熱傷有無にかかわらず、気道熱傷を疑わなければなりません。また、一酸化炭素中毒の合併にも注意する必要があり、意識障害が現れることもあります。

 口や鼻の周囲熱傷がある、鼻毛が焦げている、口腔や鼻腔内にすすがある場合などは、気道熱傷があると考えたほうがよいでしょう。

 さらに、すすの混じった痰、嗄声(させい)しわがれ声)、喘鳴(ぜんめい)(ヒューヒューといった呼吸音)などがある場合は、気道熱傷の存在は確定的です。

佐々木 淳一


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「気道熱傷」の意味・わかりやすい解説

気道熱傷
きどうねっしょう

火災や爆発事故で発生する高温の煙や熱風、および水蒸気を吸引することによって生ずる種々の呼吸障害の総称。有毒ガスの吸引によるものも含まれる。熱傷度数が高い重篤なものも多く、肺換気が障害される上気道型と、肺実質が障害される肺実質型に大別される。上気道型は、熱風や水蒸気などによって咽頭(いんとう)や喉頭(こうとう)および声門部などに浮腫(ふしゅ)を生じたことによる狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)に起因する。肺実質型は、おもに煙に含まれる有毒ガスなどによる気管や気管支および肺胞での化学的な炎症による。上気道型では、気道の閉塞による窒息を防ぐために即座に気道確保を目的とした集中治療が必要となり、その後に気道内部の損傷を修復するために皮膚移植などを検討する。気道熱傷は初期には症状が軽いようにみえても徐々に重篤化していくことも多いので、注意深い持続的な観察が必要である。

[編集部]

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