残楽(読み)のこりがく

精選版 日本国語大辞典 「残楽」の意味・読み・例文・類語

のこり‐がく【残楽】

〘名〙 雅楽管弦の演奏法の一つ。管弦の催しなどでプログラムに変化を与えるためにその中程曲名の後に残楽(三返)として組まれる。最初の一返は全員演奏、二返目の初めは各管の音頭と両弦、やがて笙(しょう)の音頭が抜け、しばらくして笛が去り、三返目には両弦の間をぬって篳篥(ひちりき)が時々流れ、最後は箏(そう)の手で終わる演奏法。
言継卿記‐大永八年(1528)二月二七日「只拍子計能候、残六各破候、残楽も海青楽一手不吹而被指置候」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「残楽」の意味・わかりやすい解説

残楽
のこりがく

雅楽のなかでの管弦で行われる変奏の一種。合奏楽器のなかで普段目立たない存在である箏の特別の技巧を聞かせるために,打楽器と笙 (しょう) と笛は曲の途中で次第に演奏をやめ,さらに曲を反復し,その間に篳篥 (ひちりき) と琵琶もなるべく旋律断片を奏することによって,箏の細かい弾奏を引立てる演奏法。この方法は御遊 (ぎょゆう) において発展した演奏形式であって,元来多分に即興的要素を含んでいたが,今日ではだいたい固定され,楽曲を3回反復する「残楽三返 (さんべん) 」が一般的に行われる。すなわち,第1回目は普通の管弦のやり方で全員が奏し,2回目は打楽器,笙,笛の順に演奏をやめ,3回目は琵琶と箏の弾奏に篳篥の音頭がきれぎれに旋律の断片を吹く。『越天楽 (えてんらく) 』『胡飲酒 (こんじゅ) 』『陪臚 (ばいろ) 』の曲で行われる。四天王寺では「ざんがく」という。

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世界大百科事典(旧版)内の残楽の言及

【管絃】より

…(3)催馬楽(さいばら)および朗詠 管絃のなかの楽器で伴奏される歌曲。(4)残楽(のこりがく) 管絃曲の正規の合奏に引きつづいて,演奏メンバーを減らして(各管の音頭および弦楽器),同じ曲を反復演奏し,この間,各パートがお互いに派手な演奏技巧を披瀝しつつしだいに演奏をやめていく。これは箏奏者の技量を披露するための演出といわれ,コンチェルトのような立場で管絃の演奏会のプログラムにしばしば組み込まれている。…

※「残楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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