正音(読み)セイオン

デジタル大辞泉 「正音」の意味・読み・例文・類語

せい‐おん【正音】

正しい音声。
奈良平安時代中国から新しく輸入された漢字音、すなわち漢音のこと。古く伝来した呉音に対していう。→和音

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「正音」の意味・読み・例文・類語

せい‐おん【正音】

〘名〙
① 正しい音声。せいいん
※応永本論語抄(1420)八佾第三「魯国に礼崩じ楽破れて正音を不知。故に孔子、魯の楽人を見て正楽の法を示し玉ふ」
※漢字三音考(1785)「さて其古言の正音はただ四十七にして、やの行(くだり)のいえと、わの行りのうとを加ふれば、都(すべ)て五十なり」 〔淮南子‐天文訓〕
② 奈良・平安時代に、中国より新しく輸入された漢音を古く伝来していた和音に対していう語。
悉曇蔵(880)五「此両法師共説呉音漢音。且如摩字那字泥字若字玄字廻字等類。呉似和音、漢如正音

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の正音の言及

【漢字】より

…これは長江(揚子江)下流地方の六朝ころの音で,日本には推古時代前後に流入し,ひろく一般に行われて,日本の字音の基礎をなした。その後,隋・唐の時代になって都が長安に移され,北方音が標準とされるようになったとき,唐制の模倣に力を注いでいた日本では,宮廷で率先して新しい北方音を取り入れ,音博士は北方音を教授し北方音を正音と呼び,僧尼の得度(とくど)にも正音を修得しなければ許可しないと幾度か布告している。したがって《日本書紀》の歌謡訓注には,漢音が多く取り入れられている。…

【訓民正音】より

…朝鮮で李朝時代に国字を制定したとき(1446),その文字に与えた名称。公布した条例も〈訓民正音〉という。〈民に訓(おし)える正しい音〉の意で,李朝第4代の王世宗によって公布された。…

【字音】より

…これに対し漢音は,奈良朝の終りから平安朝にかけて留学僧等により熱心に中央(長安)方言が学ばれたことによって導入された体系で,学習された字音らしく,中国語の字音と規則的対応を成す整然とした体系を成している。旧来の呉音に対し〈正音〉とも称され,得度僧には〈正音〉学習が勅令により義務づけられていたほどで,呉・漢両音の当時の受け取られ方の差がうかがえよう。唐音は,日本の中世に禅僧が宋時代の中国語を学んだもの(臨済唐音),江戸期に禅僧によりもたらされたもの(黄檗(オウバク)唐音)等であり,いずれも漢字音として定着したものは,呉・漢音に比して少ない。…

※「正音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android