機嫌・譏嫌(読み)きげん

精選版 日本国語大辞典 「機嫌・譏嫌」の意味・読み・例文・類語

き‐げん【機嫌・譏嫌】

〘名〙
① (譏嫌) そしりきらうこと。世人の嫌悪すること。
今昔(1120頃か)七「道が云く、聖人は食を要し給ふ事无(な)しと云へども譏嫌(きげん)の為に求め給ふか」
※浄業和讚(995‐1335)下「永離身心悩、内外の受楽ひまもなし、大乗善根界、たれか機嫌の名をきかむ」 〔晉書‐褚裒伝〕
② 事を行なうしおどき。
※右記(1192)「不扶誘之僧俗、不昼夜之機嫌
徒然草(1331頃)一五五「世に従はん人は、まづ機嫌を知るべし。〈略〉但し、病をうけ、子うみ、死ぬる事のみ、機嫌をはからず」
③ その時々の様子や形勢。事情。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※義経記(室町中か)二「片ほとりの山科に知る人ありける所にわたらせ給ひて、京のきげんをぞ窺ひける」
④ 表情、言葉、態度にあらわれている、その人の気分のよしあし。
※長門本平家(13C前)一四「今一度君を見参らせんと存じ候て、きげんをかへりみ候はず」
浮世草子世間胸算用(1692)一「四匁が四分にてもゑびは沙たのない事、と機嫌(キケン)わるし」
⑤ (形動) 気分のよいこと。心持の愉快なさま。ごきげん。
※天理本狂言・貰聟(室町末‐近世初)「したが、たれやら云たが、ゆふべも、きげんてあったと云」
※浮世草子・武家義理物語(1688)五「是非なく常より機嫌(キゲン)なる㒵(かほ)にして」
[語誌]「譏嫌」が本来用字と思われる。「随・安斎随筆‐一六」では、「譏嫌」と「機嫌」を別語としているが、疑問。①を考慮するところから転じて他の意が生じることになったと見られる。

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