朝日日本歴史人物事典 「杵屋正次郎(3代)」の解説
杵屋正次郎(3代)
生年:文政9(1826)
江戸末期から明治にかけての長唄三味線方。2代目杵屋正次郎の門弟であった正三郎の実子で,天保14(1843)年に2代目杵屋彦次郎として江戸市村座に出勤するようになる。3代目正次郎を継いだのは安政2(1855)年で,以来明治期に至るまで,三味線の名人として,また優れた作曲者としてその名を馳せた。代表作に「岸の柳」「元禄花見踊」「土蜘」「紅葉狩」「鏡獅子」などがある。そのなかには三味線の器楽的部分である合方のみの作曲もあり,「京鹿子娘道成寺」のチンチレリンの合方や「勧進帳」の滝流しの合方などを新しく付けた。また9代目市川団十郎の信頼を得て,団十郎のために多くの作品を残したことは特筆すべきであろう。正次郎の名跡は,平成期まで6代を数える。<参考文献>町田嘉章『杵屋正次郎の代々』
(長葉子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報