杏子・杏(読み)あんず

精選版 日本国語大辞典 「杏子・杏」の意味・読み・例文・類語

あん‐ず【杏子・杏】

〘名〙 (「あん」「す」はそれぞれ「杏」「子」の唐宋音) バラ科の落葉小高木。特に、その実をいう。中国原産で、栽培品種が多い。広く果樹として植えられている。高さ三~五メートル。樹皮褐色で堅い。葉は卵形広楕円形で先が急にとがり、柄があって互生する。春、葉に先だって淡紅色または白色の五弁の花が咲く。実は直径三~四センチメートルの球形で、赤みのある黄色に熟し食用とする。種子から杏仁油(きょうにんゆ)をとり、また、杏仁水を作るほか、漢方ではせき止めの薬として用いる。からもも。アプリコット。《季・夏》
▼あんずの花 《季・春》
蔭凉軒日録‐長享二年(1488)三月二八日「今日自浄光院庭樹。松樹二本、接梅一本、杏花一株移之」
※俳諧・犬子集(1633)一「しほるるは何かあんずの花の色〈貞徳〉」
[語誌]「もも」になぞらえうる外来の植物ということで、別の種類の植物と共に「からもも」と呼ばれていたが、杏の果実である「杏子」を食する習慣が、アンズという音で普及するに及び、果実だけでなく、その木や花もアンズと呼ばれることとなった。

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