日新丸(読み)にっしんまる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日新丸」の意味・わかりやすい解説

日新丸
にっしんまる

大洋漁業会社(現マルハ)所属の日本で最初に建造された捕鯨母船。1936年(昭和11)川崎造船所で建造された。1万6764.85総トン、長さ163.67メートル、主機6000馬力。それまで日本には輸入捕鯨母船としての図南(となん)丸(9800トン。1934年にノルウェーのアンタークティック号を輸入改名)などはあったが、日本建造のものはなかった。そこで29年イギリスのファーネス造船所建造の捕鯨母船サー・ジェームス・クラークロス号の設計図および関係書類の譲渡を受け、材料も大部分をイギリスから輸入して建造した。41年まで捕鯨に従事、毎年日本最高の漁獲を誇った。第二次世界大戦では油送船として徴用されたが、44年5月16日、北ボルネオバラバク海峡沈没した。

 1976年(昭和51)、同名の日新丸(1万6810.71総トン、長さ189.29メートル、主機ディーゼル9500馬力)が同社所属捕鯨母船として建造された。

[茂在寅男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日新丸」の意味・わかりやすい解説

日新丸
にっしんまる

日本で建造された最初の捕鯨母船。イギリスで造られた『サー・ジェームズ・クラーク・ロス』号を模して建造された。所属は大洋漁業株式会社。 1936年に川崎造船所で竣工,総トン数1万 6765tで,当時としては最大の大型母船であった。第2次世界大戦で軍用船として使われ,44年5月 16日バラバク海峡で沈没。 51年に進水,竣工した『日新丸』は1万 6777総tで付属船 15隻を数えたが,タンカーとして売船された。 57年南アフリカから購入した2万 7035総tの『第2日新丸』や 61年ノルウェーから購入した2万 3406総tの『第3日新丸』は世界最大級の捕鯨母船であったが,捕鯨反対の機運が高まり 88年に商業捕鯨からの撤退を余儀なくされた。

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世界大百科事典(旧版)内の日新丸の言及

【マルハ[株]】より

…32年北洋漁業への進出を図ったが政府の北洋漁業大合同の方針に阻まれたため,南氷洋捕鯨に力を注いだ。36年日本初の国際捕鯨母船〈日新丸〉を建造,37年に完成した〈第二日新丸〉と二つの船団で南氷洋捕鯨を展開した。第2次大戦の勃発により水産統制令が実施され,(株)林兼商店の事業は43年設立の西大洋漁業統制(株)に統合された。…

※「日新丸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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