文政改革(読み)ぶんせいかいかく

改訂新版 世界大百科事典 「文政改革」の意味・わかりやすい解説

文政改革 (ぶんせいかいかく)

1827年(文政10)から29年にかけて,関東の農村を対象として実施された支配強化のための改革。19世紀前半の文化・文政期(1804-30)の関東の農村は小農経営が解体し,高利貸資本としての豪農経営が展開する一方,土地を失い没落する農民が多数発生し,彼らが無宿人や渡世人として横行するようになった。このような遊民層の取締りを任務として設置されたのが1805年の関東取締出役であり,さらに,この取締り支配の方向を徹底させるために行われたのが文政改革である。27年2月関東支配について勘定奉行より〈御取締御改革〉として,40ヵ条余からなる触書(ふれがき)と組合村結成が示達された。この触書では,(1)無宿,悪党の取締りとそれに関する費用負担の方法,(2)博奕ばくち),風俗,冠婚葬祭娯楽などの奢侈取締り,(3)強訴徒党の禁止とその密告制,(4)農間商人,職人増加の抑制,などを命じている。この改革の特徴は,単に警察的な治安強化というだけではなく,農間余業(作間稼(さくまかせぎ))の調査や職人の手間賃の規制など商業統制にも着手し,経済面からも小農村落の解体化に対応しようとしたことである。しかも,このような政策を末端まで浸透させる方法として,組合村を編成し,組合村単位に調査,統制を実施していることである。この組合村は御料(天領),私領,寺社領などの領主異同に関係なく,近隣数ヵ村で小組合村をつくり,さらに小組合村を10前後まとめて大組合村とし,交通の要衝などで中心的な村を寄場(よせば)とし,大組合村の中核とした。これらの寄場村,大組合村,小組合村には,村役人の有力な者(主として豪農層)を組合村役人として任命し,取締り支配の実行者とした。こうして,農民把握の単位を村から組合村へと拡大し,村役人も名主の上に組合村役人を設定し重層化することで村落支配の再編と強化をねらったのであった。

 組合村の機能としては,(1)警察的取締りの強化,(2)村内訴訟の内済的処理(村方騒動を組合村の介入で鎮静させる),(3)農間商人,職人などの経済的統制,(4)若者組に対する規制,(5)封建的秩序意識の再建,などをあげることができる。この改革は単に文政期のみにとどまらず,天保期(1830-44)以降明治初年まで組合村体制は存続し,関東農村支配の上で重要な役割を果たしたのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の文政改革の言及

【組合村】より

…これらの組合村は,それぞれ組合議定を慣習的に,あるいは明文化してもっており,違反した村は制裁を受けた。(2)江戸幕府は関東地方における治安取締りのために1805年(文化2)関東取締出役を設置したが,さらに取締りを強化するため27年文政改革を行い,その中心に組合村の設定を置いた。この改革はこれまでの警察的な村落治安の強化に加えて,在方商人,農間渡世人の調査,職人の手間賃の規制など商業・職人統制にも着手し,経済面からも小農村落の解体化に対応しようとしたものであり,政策実施を末端まで浸透させる方法として組合村を結成させ,組合村単位に調査,統制を行ったのである。…

※「文政改革」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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