播州平野(宮本百合子の小説)(読み)ばんしゅうへいや

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

播州平野(宮本百合子の小説)
ばんしゅうへいや

宮本百合子(ゆりこ)の中編小説。1946年(昭和21)3月から47年1月まで、『新日本文学』『潮流』に4回に分けて発表した。8月15日を軍国主義国家権力と力を尽くして戦った自分たちの勝利として深い感慨を込めて描き出し、戦時下の暗い日々を回想している。網走(あばしり)刑務所の夫のもとへ行こうとして、福島で8・15を迎えたひろ子は、義弟が広島で行方不明になったため、山口県の夫の実家に赴く。そしてふたたび東京を目ざして、洪水で鉄道が不通播州平野を一歩一歩あるいて行く。敗戦直後の日本を縦断して、戦争が国土だけでなく、人の心をも無残に破壊した様相を如実に描き出し、同時に、この廃墟(はいきょ)に芽を出した新しい生命の息吹に鮮明な表現を与えた。

伊豆利彦

『『播州平野・風知草』(新日本出版社・新日本文庫)』

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