日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
按察使(旧中国の地方官)
あんさつし
旧中国の地方官で司法検察をつかさどった。その起源は漢代の刺史(しし)に求められるが、直接には宋(そう)代に各路(行政区画)に置かれた提点(ていてん)刑獄、約して提刑とよばれた官である。元代に各道に提刑按察司なる官庁を設け、のちに粛政廉訪司(しゅくせいれんほうし)と改めたが、明(みん)代は各省に民政をつかさどる承宣布政使司と並んで、司法検察をつかさどる提刑按察使司を設け、これに按察使、同副使、僉事(せんじ)などの官を置いた。清(しん)代も同様で、按察使は正三品の官であり、また臬司(げっし)といい、布政司とあわせて藩臬と称せられた。両者はもと天子に直属して省の政治に全責任をもったが、明代から臨時的に地方に派遣された総督、巡撫(じゅんぶ)がそのまま定着すると、しだいにその下風にたつ属官と化した。
[宮崎市定]