惜・可惜(読み)あたら

精選版 日本国語大辞典 「惜・可惜」の意味・読み・例文・類語

あたら【惜・可惜】

(形容詞「あたらし」のもとになる部分。感動詞的語性をもつ) すぐれたもの、りっぱなもの、価値あるものに対して、それが失われたり、欠けたり、無視されたりして、むなしく終わってしまうのは残念だという感情を表わす。
① (体言のすぐ前に置かれ、連体詞のようなはたらきをもつ一方、独立語としての性格も強い場合) そのままむなしく終わってしまうのはもったいない。惜しい。
古事記(712)下・歌謡八田(やた)の 一本菅(ひともとすげ)は 子持たず 立ちか荒れなむ 阿多良(アタラ)菅原(すがはら)(こと)をこそ 菅原といはめ 阿多良(アタラ)(すが)し女(め)
源氏(1001‐14頃)朝顔「いでや、御すき心のふりがたきぞ、あたら御疵(きず)なめる」
② (連文節、または文の始めに置かれ、半ば独立語的に、半ば副詞的に用いられる。現代語では、主としてこの用法) もったいないことにも(まあ)。惜しいことにも(まあ)。残念なことにも(まあ)。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「あたら、さてもありぬべき公(おほや)け人の、あやしうてもありつるかな。このあそんのつねになげきし物を」
山家集(12C後)上「花見にと群れつつ人の来るのみぞあたら桜のとがにはありける」

あったら【惜・可惜】

(形容詞「あたらし(惜)」のもとになる部分の「あたら」の変化した語。感動詞的語性を持つが、連体詞的用法も副詞的用法もある) =あたら(惜)
※金刀比羅本平治(1220頃か)中「あったら武者刑部うたすな、者ども」
※天理本狂言・腹不切(室町末‐近世初)「あったら命すてんより、かまとあふこを打かたけ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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