急性肺性心(読み)きゅうせいはいせいしん(英語表記)Acute cor pulmonate

六訂版 家庭医学大全科 「急性肺性心」の解説

急性肺性心
きゅうせいはいせいしん
Acute cor pulmonate
(循環器の病気)

どんな病気か

 何らかの原因で肺の血液の循環が急激に悪くなり、肺へ血液を送り出す心臓の右心室に大きな負担がかかると、右心室の急激な機能不全が起こります。この状態を急性肺性心といいます。

原因は何か

 比較的大きな肺動脈閉塞が原因です。手術、分娩外傷骨折などで長期間絶対安静を続けている時に血栓静脈のなかに生じ、その血栓がはがれて肺動脈に到達し、血液の流れを妨げてしまうことで起こります。健康な人でも航空機や列車などに長時間同じ姿勢で座っていることでこのような状態になることがあります。

症状の現れ方

 急激な呼吸困難、チアノーゼ、胸部痛などを起こし、喀血(かっけつ)失神を伴うこともあります。発熱し、頻脈(ひんみゃく)になり、ショックや突然死に至ることもまれではありません。

 また、しばしば右心不全を起こしますが、その症状は急激に現れます。

検査と診断

 血液中の酸素飽和度が著しく低下します。心電図では右心負荷の所見を示します。心臓超音波検査では、たいてい右心室が拡大して左心室を圧迫しているような所見が認められます。核医学検査で、肺の換気の状態が正常なのにもかかわらず肺の血流の状態が低下しているような所見があれば、診断は確定します。

治療の方法

 血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)静脈瘤(じょうみゃくりゅう)がある場合にはこの病気を起こしやすいので、適切な治療による予防が必要です。長期の絶対安静が必要な場合には、努めて下肢を動かしたり姿勢を変えたりして静脈血栓ができないようにします。

 また手術後なるべく早いうちに医師歩行をすすめますが、これも静脈血栓を避けるための処置ですから、ぜひ守らなければなりません。

 急性肺性心を発病すると、多くの場合、人工呼吸管理や血栓を溶かしたり吸引したりするなどの救急の治療を必要とします。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報