御船(読み)みふね

改訂新版 世界大百科事典 「御船」の意味・わかりやすい解説

御船[町] (みふね)

熊本県中央部,上益城(かみましき)郡の町。人口1万7888(2010)。北東部は阿蘇外輪山の南西斜面,中南部は九州山地に属する山地や丘陵で占められる。西部は熊本平野の一角で緑川の支流御船川が流れる。御船の名は,かつて有明海がこの付近まで湾入しており,景行天皇が九州巡幸の際,ここで船をおりて阿蘇へ向かったという伝説にちなむ。中心集落の御船は,中世,阿蘇氏,さらには甲斐氏らの拠る御船城の城下にできた町屋が起源とされ,近世には御船川舟運の河港,市場町として栄えた。明治期には船で運ばれる良質米を用いた酒造業が盛んであったが,現在は衰退し,白壁酒蔵に昔のおもかげをとどめている。米,タバコ,ミカン,茶の栽培や養蚕などの農業が主産業で,杉,ヒノキの産も多い。御船城跡のほか,西南戦争の激戦地となった妙見坂には熊本隊兵士の墓地,砲台跡などの史跡がある。南東端には風神鍾乳洞がある。西境近くを九州自動車道が走り,御船インターチェンジが設置されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報