(読み)ゆはず

改訂新版 世界大百科事典 「弭」の意味・わかりやすい解説

弭 (ゆはず)

弓の両端で弦をかけるところをいう。《日本書紀》神武即位前紀には,金色の鵄(とび)が弓の弭にとまったと記す。弓が木製であるばあいに,その両端を細く,あるいは扁平に削って弦をかけやすくし,溝や切りこみを作って弦がはずれないようにしたものは多い。これを木弭(きゆはず)とすれば,骨・角を彫刻して弓の両端にはめたものは骨弭・角弭,金銅・銀などの金属で作ってかぶせたものは金(かな)弭である。弓が腐朽して弭だけが遺物として出土するばあいには,それぞれ弭形角製品,弭金物などと呼んでいる。弭形角製品は縄文時代後期・晩期に多く,長さ3~6cm,底面から穿った円錐形の孔に木弓の末端を挿入したものである。弭金物は5~7世紀の古墳時代の遺品があって,長さ6~7cm,円筒形の基部と幅を薄くした末端との界に,斜面を形成している。千葉県木更津市金鈴塚古墳出土の銀弭は,弓の上端に用いる末弭(うらはず)が短く,下端に用いる本弭(もとはず)はやや長い。
弓矢
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弭」の意味・わかりやすい解説


ゆはず

ゆみはず (弓筈) ともいう。弓の両端の弦をかける部分。上端を末弭 (うらはず) ,下端を本弭 (もとはず) という。丸木弓では末端近くに節をつけ,その近くを細くして,弦をかけやすくしているものもある。古墳時代には弭の部分に着装する金具 (弭金物) も出現している。縄文時代や弥生時代に弭形の鹿角製品があるが,これの用途が弭であるかどうかは不明。平安時代以後,儀仗用の蒔絵弓や螺鈿 (らでん) 弓には,銀の弭金物を用いた。

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