引負(読み)ひきおい

精選版 日本国語大辞典 「引負」の意味・読み・例文・類語

ひき‐おい ‥おひ【引負】

〘名〙
他人に代わって売買取引を行なったり、あるいは人の金銭を融通したりして、その損失が自分の負債となること。商店の使用人などが主人に代わって取引をして、その代金がとどこおって主人に対して負債となること。また、その負債。
※仮名草子・大仏物語(1642)下「あまつさへかんでうをさへたてずして、ひきおひこれある人もあり」
② 使用人が主人の金を遊興に使い込んだりして、主人に負債となること。また、その金銭。使い込み。
※俳諧・西鶴五百韻(1679)葛何「問屋の霞引負(ひきヲイ)農外〈西吟〉 請出すといふ計にや芳野山〈西友〉」
③ 江戸時代、百姓の納めた年貢名主が着服して上納しないこと。また、その金銭。
地方凡例録(1794)六「名主一分の持田地の年貢未進、又は百姓より収たる年貢引負致せば」
④ 借金。負債。
洒落本・禁現大福帳(1755)一「身揚(みあがり)は親かた前の引負(ヒキオイ)
⑤ 身に損失となるような物事をしょいこむこと。
※洒落本・龍虎問答(1779)「瘡(かさ)と言ふ引負をするともがら眼前にあまた有」

ひき‐お・う ‥おふ【引負】

〘他ハ四〙
① 他人に代わって売買・取引を行なったり、人の金銭を融通したりして、その損失が負債となって残る。
② 使用人などが、主人の金、公金などを使い込む。
浮世草子日本新永代蔵(1713)二「手代に引負(オハ)れ」
③ 借金する。負債する。
④ 身に損失となるような物事をしょいこむ。
唐人お吉(1928)〈十一谷義三郎〉六「町の失望と、反感侮蔑とを、当然、引背負(ヒキオ)はねばならなかった」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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