好逑伝(読み)こうきゅうでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「好逑伝」の意味・わかりやすい解説

好逑伝
こうきゅうでん

中国、清(しん)代の小説。『侠義(きょうぎ)風月伝』ともいう。4巻18回。作者は「名教中人」というが未詳題名は『詩経』周南の「関雎(かんしょ)」の「窈窕(ようちょう)たる淑女は、君子の好(よ)き逑(つれあい)」に拠(よ)り、鉄中玉(てつちゅうぎょく)が悪人との葛藤(かっとう)ののち、天子の仲介によって水氷心(すいひょうしん)とめでたく結ばれるという典型的な才子佳人小説である。清初の作と推定され、婦人の貞節を強調する儒教道徳臭の強い作品であるが、類型化されたこの種の作品のなかでは人物の描写や構成に優れており、18世紀なかば以来、英語、フランス語、ドイツ語に十数種の翻訳があり、ヨーロッパでは広く知られた作品である。

[尾上兼英]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「好逑伝」の意味・わかりやすい解説

好逑伝
こうきゅうでん
Hao-qiu-zhuan

中国,明末清初の文語体章回小説。名教中人の作。 18回。『侠義風月伝』ともいう。当時流行したいわゆる才子佳人小説の一つ。作者の本名は未詳。成立年次も定かでない。御史鉄玉の子の鉄中玉と佳人の水冰心とが,さまざまな障害と中傷を乗越えて結ばれるごくありきたりの筋。中傷を正しく裁いたのが天子で,「名教」によく合致した儒教臭の濃い小説であるが,早くからイギリス,フランス,ドイツに紹介され,日本でも滝沢馬琴翻案『好逑伝脚色抄』がある。

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