奴国(なこく)(読み)なこく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「奴国(なこく)」の意味・わかりやすい解説

奴国(なこく)
なこく

福岡市付近にあった弥生(やよい)時代の原始国家。「なのくに」ともいう。『日本書紀』に儺県(なのあがた)・那津(なのつ)とみえ、後の那珂(なか)郡に比定される。『後漢書(ごかんじょ)』倭伝(わでん)によると、57年(建武中元2)に奴国が後漢に朝貢し、使者自ら大夫と称したとあり、光武帝(こうぶてい)は奴国王に印綬(いんじゅ)を賜ったとある。1784年(天明4)福岡市志賀島(しかのしま)から発見された「漢委奴国王」の金印は、このときに与えられたものとされている。また『魏志倭人伝』(ぎしわじんでん)によると、伊都(いと)国の東南百里にあり、長官を兕馬觚(しまこ)、副官を卑奴母離(ひなもり)といい、戸数は2万余戸あったと記される。奴国は伊都国とともに紀元前後ころより大陸との交易に従事し大いに発展した。奴国域内の須玖(すぐ)岡本遺跡からは前漢鏡、銅剣銅矛(どうほこ)など多数の舶載品が発見されている。

[井上幹夫]

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