女の一生(山本有三の小説)(読み)おんなのいっしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

女の一生(山本有三の小説)
おんなのいっしょう

山本有三長編小説。1932年(昭和7)10月から33年6月まで『朝日新聞』に連載されたが、作者検挙にあい中断。これに補筆して同年11月、中央公論社より刊行初恋に破れ、女医を目ざして医学校に進んだ御木允子(みきまさこ)は、妻のある高校教師公荘(くじょう)と恋に陥り、私生児を出産する。やがて、妻に死別した彼と結婚するが、高校生になったひとり息子允男(まさお)は左翼運動に入って家を出る。夫にも先だたれながら、悲しみを乗り越えてふたたび女医として生きようとする彼女の決意を「第二の出産」と位置づけ、「肉体的の出産によって女は母になる。そしてもう一つの出産によって母おやは人間になるのだ」という主題で女の半生を描いた作品。

[宗像和重]

『『女の一生』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例