夏油(読み)げとう

改訂新版 世界大百科事典 「夏油」の意味・わかりやすい解説

夏油[温泉] (げとう)

岩手県南西部,北上市の夏油川上流にある山峡の温泉。嘉祥年間(848-851)の発見と伝えられる昔からの名湯で,岳の湯といわれてきた。泉質は含食塩セッコウ泉で,泉温は49~67℃。特殊成分として放射能を含み,1965年国民温泉に指定された。温泉の湧出する河岸一帯には,石灰華段丘があり,なかでも天狗の湯における石灰華の沈殿は,高さ20m,頂上部径10m,下部径25mにおよび,日本最大の規模で,特別天然記念物に指定されている。夏油渓谷のブナ林に囲まれたひなびた温泉で知られ,露天ぶろ,自炊宿が渓流沿いにあり,昔ながらの面影を残している。利用期間は5月下旬から11月上旬までで,国民宿舎や温泉保養システムを導入した温泉館などの施設がある。東北本線北上駅からバスが通じる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の夏油の言及

【温泉華】より

…アメリカのイェローストーン国立公園はさまざまな形の噴泉塔,温泉華の池で有名。日本では岩手県夏油(げとう)温泉の天狗の湯にある高さ20mの石灰華ドーム,石川県岩間温泉の噴泉塔が有名。硫黄を主成分とする湯の華を採集乾燥したものが,温泉地のみやげ品として売られている。…

※「夏油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」