地獄谷石窟仏(読み)じごくだにせつくつぶつ

日本歴史地名大系 「地獄谷石窟仏」の解説

地獄谷石窟仏
じごくだにせつくつぶつ

高畑町字地獄谷、春日山石窟仏東南約三〇〇メートルの国有林中にある。国史跡。凝灰岩層をくり抜いた西面の石窟を仏龕としたもので、奥壁と両側壁に六躯の仏像が線彫されている。この窟を、俗に聖人せいじん窟とよぶ。中央本尊は蓮華座に座す約一・四メートルの像で、阿弥陀如来とも盧舎那仏ともいわれ一定していない。向かって右に像高九一センチの十一面観音立像、左に約一メートルの薬師如来立像が線刻されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「地獄谷石窟仏」の解説

じごくだにせっくつぶつ【地獄谷石窟仏】


奈良県奈良市高畑町にある石仏。史跡春日山石窟仏の東南数百mの国有林内にあり、西南に面した凝灰岩質の岩壁を刳()り抜いて線刻されている。1924年(大正13)に国の史跡に指定された。開口3.9m、奥行き2.9m、高さ2.4m、奥壁と両側の壁に6体の仏像が線刻されており、俗に「聖人窟」と呼ばれている。奥壁は高さ1.7m、中央に高さ1.7m、幅1.12mの枠取りがなされ、2重の蓮華座に結跏趺坐(けっかふざ)する如来像が線刻されている。量感豊かな体部と鋭い線を刻んだ気品の高い作風を示しており、全体に色彩が施されていたようで、金箔痕跡も認められた。如来像の向かって左側に二重円光背の薬師如来像、右脇には十一面観音立像が線刻され、付近には芳山(ほやま)の二尊仏をはじめ、奈良・鎌倉室町時代の石仏が数多く存在している。近畿日本鉄道奈良線近鉄奈良駅から奈良交通バス「破石町」下車、徒歩約50分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報