結跏趺坐(読み)けっかふざ

精選版 日本国語大辞典 「結跏趺坐」の意味・読み・例文・類語

けっか‐ふざ【結跏趺坐】

〘名〙 (「跏」は足の裏。「趺」は足の甲) 仏語坐法一つ。足の甲で左右それぞれ反対側のももをおさえる形のすわり方。降魔坐と、吉祥坐との二種がある。結跏。跏趺坐。趺坐。結坐。跏坐。
三代実録‐元慶四年(880)一二月四日「誦金剛輪陁羅尼。正向西方。結跏趺座」
太平記(14C後)一〇「入道是を見て快げに打笑ひ、閑々と中門曲彔をかざらせて、其の上に結跏趺坐(ケッカフサ)し」 〔慧琳音義‐八〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「結跏趺坐」の意味・読み・例文・類語

けっか‐ふざ【結×××坐】

《「跏」は足の裏、「趺」は足の甲の意》坐法の一。両足の甲をそれぞれ反対のももの上にのせて押さえる形の座り方。先に右足を曲げて左足をのせる降魔坐ごうまざと、その逆の吉祥坐の2種がある。仏の坐法で、禅定ぜんじょう修行の者が行う。蓮華坐れんげざ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「結跏趺坐」の意味・わかりやすい解説

結跏趺坐 (けっかふざ)

座り方の一種仏教においてもっとも基本的な座法で,全跏趺坐(ぜんかふざ)と半跏趺坐(はんかふざ)の2通りがある。全跏趺坐は右足を左腿(ひだりもも)の上に,左足を右腿の上にのせて交差させ,両手は掌(てのひら)をあお向けに重ねて,足の交差部の上に置く姿である。また左右逆の順序で交差させることもある。両手を重ねる場合の上下は足の上下と同じである。これとは別に,左右の足を完全に交差させず,一方の足のみを他方の腿の上にあげる座法を半跏趺坐という。いずれも座禅瞑想の場合,長時間もっとも安定した姿勢を保ちうるとされている。仏像彫刻においては右足が上で左足が下の形を降魔坐(ごうまざ),その逆を吉祥坐(きつしようざ)と呼んでいる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「結跏趺坐」の意味・わかりやすい解説

結跏趺坐
けっかふざ

坐禅(ざぜん)法の一つで、両脚を組んですわる方法。跏は足を組み合わせる意、趺は足の甲。両脚を組み、左右の足の甲を反対側のももの上にのせて安坐する。全跏(ぜんか)、本跏坐(ほんかざ)ともいう。吉祥(きっしょう)坐と降魔(ごうま)坐の2種がある。吉祥坐は、先に左足を右のももの上に置き、次に右足を左のももの上に置く坐法で、仏の説法時の座り方である。降魔坐は、右足を左のももの上に置き、左足を右のももの上に置く坐法で、天台や禅はこの坐法による。顕教(けんぎょう)の仏菩薩(ぶつぼさつ)像の坐相は降魔坐で、吉祥坐は密教の法儀とされる。片足だけをももの上に置くのを半跏趺坐(はんかふざ)(半跏坐、賢坐(けんざ))という。

[石川力山]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「結跏趺坐」の意味・わかりやすい解説

結跏趺坐【けっかふざ】

座禅のときの座法で足の上下により2種ある。降魔坐(ごうまざ)は右足首で左の大腿(だいたい)部を押さえ,左足を右の大腿部に重ねる。以上の逆が吉祥坐(きっしょうざ)。手は左手の掌(てのひら)を右手の掌の上に乗せ臍下(せいか)に置く。これらを総称して全跏趺坐といい,片足のみ他方の大腿部に乗せる法を半跏趺坐という。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

四字熟語を知る辞典 「結跏趺坐」の解説

結跏趺坐

仏教の坐法の一つ。あぐらをかき、右の足を左のももの上に、左の足を右のももの上に置き、足の甲でおさえて足の裏を上に向けて組むもの。

[活用] ―する。

[使用例] 薄暗い底の台の上に結跏趺坐したままねむっている僧形がぼんやり目前に浮かび上がって来た[中島敦*悟浄出世|1942]

[解説] 「跏」は足の裏。「趺」は足の表、すなわち甲のこと。

出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「結跏趺坐」の意味・わかりやすい解説

結跏趺坐
けっかふざ

禅定における両足を組んだすわり方。右足を左のももに置き,左足を右のももに置くものを降魔坐 (ごうまざ) ,左足を右のももに置いて,右足を左のももに置くものを吉祥坐,片方だけのものを半跏坐という。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の結跏趺坐の言及

【座禅(坐禅)】より

…禅は精神統一を意味する,サンスクリットのディヤーナ,もしくはパーリ語のジュハーナの音訳で,人々の日常生活の姿勢を,行・住・坐・臥の四つに分けるうち,禅の実践には,坐の姿勢がもっとも適当であるため,特に座禅の名称が起こる。座禅の仕方は,《リグ・ベーダ》の時代からほぼ一定していて,両脚を組んで座り,その上に両手を揃えておく結跏趺坐(けつかふざ)を基本とし,中国と日本では,いくつかの坐禅儀にその方法を詳説するが,後代はしだいに身体の姿勢よりも,精神的な心構えを重視するようになり,禅を必ずしも坐に限らず行住坐臥,語黙動静のすべてをその姿とするに至った。とりわけ中国と日本の公案禅では,静止的な禅定より,日常の動中のくふうを重視する。…

【ひざ(膝)】より

…胡坐と片立膝は中世の絵巻に多数描かれ,当時はむしろこれらが一般的だったといえる。そのほか箕踞(ききよ),割坐,楽坐,結跏趺坐(けつかふざ),半跏趺坐(はんかふざ),蹲踞(そんきよ),跪坐(きざ)などがある。跪坐には膝と足指の先を床面に着けて尻は踵に乗るものと,膝から上が垂直に立つものとあり,後者の姿勢のままで歩くのが〈膝行〉で,身分の低い者が高い人の前に出たり退いたりする際の作法だった。…

【仏像】より

…三尊像の両脇侍に屈斜姿勢が多く,この場合,中尊は座形が普通である。座像では両足の甲を他方の足の大腿部にのせる形の結跏趺坐(けつかふざ)が普通であるが,これには左右の足のいずれを上にするかで吉祥坐と降魔(ごうま)坐の別がある。日本の天台系の造像は右足を外にする吉祥坐といわれ,そこに意味付けもおこなわれているが,異論もある。…

※「結跏趺坐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android