和解(志賀直哉の小説)(読み)わかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「和解(志賀直哉の小説)」の意味・わかりやすい解説

和解(志賀直哉の小説)
わかい

志賀直哉(なおや)の代表的な中編小説。1917年(大正6)10月『黒潮(こくちょう)』に発表。19年3月新潮社刊行の『和解』に収録。父との久しきにわたった不和と一挙に訪れた和解をストレートに描いた私小説。先に発表した『大津順吉』(1912)、『和解』ののち視点を変えて発表した『或(あ)る男、其(その)姉の死』(1920)とともに中編三部作を形成。我孫子(あびこ)に住む主人公と祖母・父・義母の住む麻布(あざぶ)の家とのこだわりを内にはらんだ行き来、父の反対を押し切って結婚した妻の出産とそれに引き続く赤ん坊の死、さらに次の子の新たな出産、作品のなかで私怨(しえん)を晴らしたくない主人公の思いなど過去と現在が交錯する。最終的に自然な形での堅固な和解成立の経緯が力強く一気に描かれ、内心にもっとも忠実に生きようとする志賀本質がよくにじみ出ている力作

紅野敏郎

『『和解』(角川文庫・新潮文庫)』

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