吾妻山(福島・山形県境)(読み)あづまやま

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

吾妻山(福島・山形県境)
あづまやま

福島・山形県境にある火山群の総称。玄武岩、安山岩からなる。「あづまさん」ともいう。中~西部にある諸峰には噴火記録はまったくなく、最高峰の西吾妻山(2035メートル)をはじめ、西大巓(にしだいてん)(1982メートル)、東大巓(1928メートル)、中吾妻山(1931メートル)などのほぼ標高1500メートル以高は、アオモリトドマツなどの亜寒帯林が広がっている。東部にある一切経山(いっさいきょうやま)(1949メートル。成層火山)、吾妻小富士(こふじ)(1705メートル。典型的な円錐(えんすい)火山)、東吾妻山(1975メートル。楯状(たてじょう)火山)などの活動期は新しく、一切経山から吾妻小富士には裸地が広がり、火口湖五色(ごしき)沼、桶(おけ)沼もある。一切経山の南から東斜面には「八幡焼け(はちまんやけ)」と称される噴気・地熱地域が広く分布し、とくに東山腹の大穴火口がもっとも活発で、1950年(昭和25)、1977年の小爆発もここで発生した。1893年(明治26)の大爆発は南山腹の燕沢(つばくろざわ)でおき、三浦、西山両調査員が殉職した。有史以後の諸噴火はすべて水蒸気爆発らしい。磐梯朝日(ばんだいあさひ)国立公園に属し、1961年吾妻スカイライン開通後、訪客が急増したが、その中心地の浄土平は一切経山や吾妻小富士の観望に好適。周辺には土湯微温湯(ぬるゆ)、吾妻高湯、五色、白布(しらぶ)など温泉が多く、冬もスキー客でにぎわう。福島地方気象台が常時火山観測中である。

諏訪 彰]


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