日本大百科全書(ニッポニカ) 「合理化(心理学)」の意味・わかりやすい解説
合理化(心理学)
ごうりか
rationalization
イギリスの精神分析学者アーネスト・ジョーンズErnest Jones(1879―1958)が精神分析に導入した用語。日常語としては、むだを省いてより能率的にすることをいうが、精神分析では自分の行動を正当化し、その道徳的判断あるいは感情が理屈にあっているように主張することをいう。たとえば、イソップ物語『キツネとブドウ』から例えられる「酸っぱいブドウ」のように、望んだものが得られず自尊心が傷つけられたとき、求めていたものはもともと望ましいものではなかったと思い込むことで失敗を帳消しにして不快を避けようとするようなものである。しかし、その行動、道徳的価値観は一般に承認されるものであるとは限らない。この合理化には、日常的な自己弁護から、妄想的ではあるけれども論理的に体系化されたものまである。防衛機制の一種とみなされることもあるが、衝動を知的活動によってコントロールして不安を防衛する知性化と異なり、衝動を直接に防衛するものではないから、通常の防衛とは区別されるべきものである。
[外林大作・川幡政道]
『アンナ・フロイト著、外林大作訳『自我と防衛』第2版(1985・誠信書房)』