双子の赤字(読み)フタゴノアカジ(英語表記)twin deficit

デジタル大辞泉 「双子の赤字」の意味・読み・例文・類語

ふたご‐の‐あかじ【双子の赤字】

財政収支貿易収支経常収支)がともに赤字になっている状態のこと。特に、1980年代の米国レーガン政権下の経済状態をいう。
[補説]レーガン政権では、減税軍事費増大などで財政赤字が拡大した。一方、国債を売るための高金利政策により、海外資本が集まってドル高となった。このため国内企業の競争力が弱まり貿易赤字も拡大。クリントン政権下で一時、財政赤字は解消したが、ブッシュ政権下ではイラク戦争の戦費支出などで再び拡大した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「双子の赤字」の意味・わかりやすい解説

双子の赤字
ふたごのあかじ
twin deficit

財政収支と経常収支の赤字が並存する状態をさす経済用語。この状態に陥ると、財政赤字を穴埋めする海外資金の流入を促す目的で高金利政策がとられ、これが自国通貨高を招き、経常赤字を悪化させるという悪循環に陥りやすい。とくに長期金利が名目経済成長率を上回る状況が長引けば、国債が暴落する恐れがあるとされている。

 1980年代のアメリカでは、レーガン政権が行ったレーガノミクスとよばれる経済政策による大規模減税と軍事費増大で財政収支が悪化。もともと経常赤字であったアメリカはこの財政赤字を海外資金(国債の国外消化)でまかなうため、高金利政策をとった。その結果、ドル高となり、国内産業は競争力を失い、輸出減と輸入増で経常赤字が悪化するという悪循環が生じた。問題解消のため、プラザ合意ドル安への誘導策がとられ、1990年代後半には財政黒字に転じた時期もあった。しかし、2000年代以降、イラク戦争の経費増大やリーマン・ショックなど世界金融危機による財政支出の増大などで、双子の赤字は増加傾向にある。アメリカ以外でも、イギリスなど経済が成熟した国のほか債務危機ギリシア、新興国通貨不安に直面したブラジルインドトルコなどがこの状態に陥った。

 日本でも2014年(平成26)3月、財務省が双子の赤字に陥る懸念があると表明した。日本では1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、財政赤字と経常黒字が並存する状態が続いてきた。しかし、双子の赤字となることが現実味を帯びた日本経済は、成長戦略の断行と同時に、社会保障費などの歳出削減策や国債消化策など財政運営の見直しを迫られている。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「双子の赤字」の意味・わかりやすい解説

双子の赤字
ふたごのあかじ
twin deficits

1980年代のアメリカ合衆国の経常収支の赤字と財政赤字。経常収支は貿易収支貿易外収支移転収支に分けられるが,貿易収支の赤字が問題となった。ロナルド・W.レーガン大統領は 1980年代,歳出削減,大幅減税,規制緩和マネー・サプライ(通貨供給量)の抑制を基本としたレーガノミクスによって経済の活性化をはかり,強いアメリカの再現を目指した。この政策によりスタグフレーション状態から脱したものの,軍事費をはじめとする歳出増大による財政赤字の拡大,これに通貨供給量の抑制が加わって民間資金の逼迫を引き起こし金利の高騰を招いた。高金利は外国からの資金を引き寄せてドル高の原因となり,輸入の増大,輸出の減少という貿易赤字拡大の原因となった。財政赤字は歳出の増加ばかりでなく,レーガン政権による楽観的な歳入見通しにも原因があり,また貿易赤字は工業分野における低い生産性とも深い関係があった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「双子の赤字」の解説

双子の赤字
ふたごのあかじ

アメリカのレーガン政権時代における財政赤字と貿易赤字
インフレ抑制と経済成長の同時達成をめざすレーガノミックスにより減税が行われて政府の収入が減り,また,強いアメリカの復活をめざした軍事費の増大によって双子の赤字が発生してアメリカ経済を苦しめた。これはクリントン政権下における空前の好景気まで続いた。

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FX用語集 「双子の赤字」の解説

双子の赤字

米国のレーガン政権が行なった経済政策「レーガノミックス」によって生まれた、米国の財政収支と貿易収支の赤字のことをいいます。「双子の赤字」は、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2003~2004年において最も深刻であったといわれております。

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