原裸子植物(読み)げんらししょくぶつ(英語表記)progymnosperm
Progymnospermopsida

改訂新版 世界大百科事典 「原裸子植物」の意味・わかりやすい解説

原裸子植物 (げんらししょくぶつ)
progymnosperm
Progymnospermopsida

1960年にアメリカのベックC.B.Beckによって提唱された分類群シダ植物の1綱)で,古生代(上部デボン紀から石炭紀)の植物。前裸子植物ともいう。それまで,シダ類のうちで最も原始的とされていた古生シダ目ProtopteridialesのアルカエオプテリスArchaeopteris(葉だけで知られていた)と,裸子植物のピツス目に入れられていたカリキシロンCallixylon(茎だけが知られていた)とは,実は同じ植物の二つの部分であることが明らかにされた。葉は胞子植物段階で,茎は裸子植物と酷似しているこの植物は,まだ種子をもってはいなかったが,裸子植物の直接の先祖型であると推定されている。1940年代におけるスウェーデンのフローリンR.Florinらの研究によって,裸子植物にはソテツ系と針葉樹系の2系統があることが確かめられていたが,裸子植物がシダ植物段階のどのようなものから進化してきたのかは,1950年代になってもわかっていなかった。ベックの発見以後,それまで古生シダ目に入れられていたシダ植物の葉の化石が再検討され,ピツス目の茎の化石と比較研究された結果,古生シダ目の7属ほどの植物はいずれも裸子植物の幹と同じ類の樹幹をもっていたことが明らかにされた。代表的なカリキシロンは北アメリカに多く産するもので,ソ連からも1種が報告されている。大きなものでは幹の径が1.5m,高さは20mに達していたらしい。また,アルカエオプテリスは,葉の構成が原始的で,まだ葉面というべき広がりをもっていないものが多かった。シダ類と比べても原始的な葉ではあったが,すでに異型胞子性のものがあったということは,この群が種子をもつようになった植物(種子植物)の先駆者であったことを示す。アルカエオプテリス目から針葉樹系が,アニューロフィトン目からソテツ系がそれぞれ進化してきたとし,原裸子植物に2目を認める考え方がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原裸子植物」の意味・わかりやすい解説

原裸子植物
げんらししょくぶつ

前裸子植物

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世界大百科事典(旧版)内の原裸子植物の言及

【アルカエオプテリス】より

…ところがアルカエオプテリスがカリキシロンの枝についた化石が発見され,両者が同一の植物であることが判明した。葉はシダ状,茎は針葉樹状というこの異様な植物は原裸子植物類progymnospermsとして,次の石炭紀に栄えたシダ種子類や針葉樹類の共通の祖先系の植物と考えられている。しかしこの考え方には疑問をもつ人もいる。…

【裸子植物】より

…もう一つの裸子植物の大きな群,球果類については,1948‐51年にフローリンR.Florinが,コルダイテスとの類縁性を二畳紀からジュラ紀にかけての多くの化石の研究により提言した。いっぽう,ベックC.B.Beckによる前裸子類(原裸子(げんらし)植物ともいう)の発見(1960)により,ソテツ系,球果系ともにそれぞれ原裸子植物のアネウロフィトン目とアルカエオプテリス目から由来するという提唱もあり,裸子植物の系統については単元論,二元論をめぐり,現在でも論議が続いている。
[球花]
 裸子植物で高度に特殊化した花の集合体(球花)は,球果類(針葉樹)にみられる。…

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